【流行の「90年代」を解体する Vol.1 (CYPRESS HILL / サイプレス・ヒル)】

一昨年あたりからファッション雑誌やインターネットサイトなどで、よく目にする様になった「90年代リバイバル」という言葉。その名の通り90年代に流行したアイテムやスタイルが再び現代に返り咲きトレンドとなっています。

その90年代をテーマに、カルチャーとスタイルが混ざり合ったその時代を紐解くシリーズ「BACK TO 90’s」をこれからお届けしていきたいと思いますので、どうぞお付き合い下さいませ。

第一回目となる今回フューチャーしたいのは、ヒップホップグループ

『CYPRESS HILL』(サイプレス・ヒル)

1985年、カリフォルニアの悪名高い街サウス・セントラルにて3人のメンバーによって結成されました。キューバ出身のセン・ドッグ、メキシコとキューバの血を引くLA出身のB-リアル、イタリア系アメリカ人のブルックリン出身のDJ-マグス。その異なる人種の3人は地元で出会ったときから固い絆で結ばれ、必然的であったかのようにグループを結成し、ヒップホップシーンにて大きな功績とその名を刻み込みました。

元々、セン・ドッグとB-リアルは街を牛耳るギャングのメンバーとして活動していました。セン・ドッグは14歳の頃、LAに移り住み、学生時代はプロ・フットボール選手を目指すべく奮闘していました。しかし、問題を起こし退学処分となった彼は地元のストリート・ギャングに仲間入り、そこで数多な悪行を経験するも肌になじめず脱退。一方、B-リアルはアメリカ最凶のギャング団クリップスが敵対するブラッズのメンバーとして活動。その最中の抗争にて背中に銃弾を浴び、九死に一生を経てギャングから足を洗う。DJ-マグスは彼もまたNYから14歳の時LAに移り住みDJとして活動。7A3というグループに参加しつつ、他の2人が先に出会って結成していたサイプレス・ヒルの前身グループであるDVXで彼らと出合いすぐに意気投合しました。

そして、結成されたサイプレス・ヒルは、地道な活動と念入りな楽曲制作の期間を経て、満を持して1991年に待望の1stアルバム「CYRESS HILL」をリリースしました。それまでにアンダーグランドで培ったダーティーなファンキーさとドープさを従え、独特なリズムでロック色の強いハードコアナンバーを叩き込み鮮烈なデビューを果たしました。そこに収録されたシングルカットの”HOW I COULD JUST KILL A MAN”は大ヒットを呼び、瞬く間に彼等の名を一躍スターダムにのしあげました。後にその曲はRAGE AGAINST THE MACHINEにカヴァーされるなどアーティストにも多大な影響を与えました。


出典:Black Sunday・CYPRESS HILL

そして、その勢いのまま93年にリリースした2ndアルバム「BLACK SUNDAY」は、全米POPチャート1位を獲得する快挙を果たし、600万枚以上のセールスを記録するなど偉業を果たしました。手の付けられない街のゴロツキから地元の人気グループ、そして全世界が注目する一流のアーティストとして成り上がっていった彼等は遂に非凡な才能を爆発させたのであります。

その成功を掴んだ要因として挙げられるのが、ロックファンにもアプローチした彼等のスタイルにありました。大ヒットを生んだアルバム「BLACK SUNDAY」は、かの有名なオジー・オズボーン率いたHR/HMバンドBLACK SABBATHからインスピレーションを受け、彼等の曲をサンプリングに使用したり、タイトル&ジャケットデザインに至るまでサバスの呪術的なおどろおどろしい雰囲気を彼等流儀にまとめた内容として、HIP HOPにロック/メタル要素を取り込んだ新たなスタイルを打ち出しました。

また、その頃SOUL ASSASSINというチームを結成し、そこからHOUSE OF PAINを世に送り出し、DJ-マグスは彼等の最大のヒット曲”JUMP AROUND”をプロデュースするなど知名度を更に拡大させました。

その後、3rdアルバム「CYPRESS HILL III (TEMPLES OF BOOM)を95年にリリースするも直後にセン・ドッグが脱退する事態に見舞われるも活動を続行。そして再びセン・ドッグが復帰&新メンバーにエリック・ポポを迎え新生サイプレス・ヒルとして98年に4thアルバム「CYPRESS HILL IV」をリリース。以降、2000年に入り定期的にアルバムをリリースしながらも健在ぶりをアピール。いまではHIP HOP界の超重鎮グループとしてその名を轟かせています。

B-リアルは現在、話題となっているRAGE AGAINST THE MACHINEのメンバーによるビッグプロジェクトPROPHETS OF RAGEにPUBLIC ENEMYのチャック・Dと共に参加するなど活動の幅を広げています。

サイプレス・ヒルは、HIP HOPにロックの流れを呼び込むなど人種の壁をこえた、それは革命とも呼べる偉業を成し遂げました。しかし、彼等は威張ることもなくひたすらマリファナへの愛情を歌に込め、スモーキーな出で立ちで自分達のスタイルや思想を貫いています。時にステージ上でジョイントやボングを用い吸引、それを観客にも分け与えるなど日本では考えられない(確実に犯罪として処罰される)パフォーマンスを行なうなど、肝の据わり様が半端ではない。さすが元ギャング!

そんな自分達のやりたいことを貫き通した彼等らは、ストリートの連中から他ジャンルのアーティストまで幅広い層に支持されています。90年代後半に自分達が主催となって立ち上げたイベント「SMOKEOUT FESTIVAL」では、ヒップホップ〜ロック〜メタル〜パンクに至るまで幅広いメンツを揃え、いまでは定期的に開催される人気フェスとして成功を果たしました。

こうして90年代を自らの実力と成果で築き上げたサイプレス・ヒルはラテン系で最も成功したヒップホップグループとして言えるでしょう。90年代を紐解くにあたり彼等の名は欠かせないので、ぜひ今からでも掘り下げて見て下さい。

彼等の最新Tシャツも入荷しているので、そちらもどうぞお見逃しなく!90年代テイストのグラフィックデザインが超クールな一枚です。

アイテム詳細はウェブストアにて。

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